このコミュニティ・ファームの生産物は「羊のチーズ」。

日本ではめったに食べられないけど、フランスでは一般的なチーズです。

これを村の市場や、ニースの日曜市で販売した収益で、ファームは成り立っています。

 

なので、ファームの主役はもちろん、羊。

生活のすべては、羊を中心に回っています。

 

朝7時。山中にあるファームはまだ夜が明けず、真っ暗。

そんなうちから、朝一番の羊の世話が始まります。

ゼロから建設した手作りの羊舎。

ぎゅうぎゅうに詰め込まれた羊さんたち。ここには500頭ほどの雌羊が飼われています。

搾乳台の上で羊を待ち構えるWWOOFerのウリエル。この台に一頭一頭羊を乗せて、搾乳してゆきます。

羊が餌を食べるのに夢中になっている間に、一日のぶんの乳を絞り取ります。

与えられた分量の餌を食べ終わって、羊が飽きると暴れる始めるので、手早くやらないと大変です。

最初は慣れないので、スパゲッティーくらいの分量しか出せないのですが、

ファームの経営スタッフたちはさすがというか、きしめんくらいの太さで絞りとってゆきます。

搾乳が終わったら飼い葉を与えます。羊にとっての、一日の業務は終わり。お疲れ様でした。

天気がいい日は、このあと近くの森まで牧羊犬と共に500頭の羊を連れて散歩にゆき、日が傾くころにまた羊を連れて戻ってきます。

一度「何時に連れて戻ればいいの?」と聞いたら、

「お日さまがあのへん(と、言って山の上の空を指差す)まで来たら」と言われました。

まさにザ・羊飼いの生活です。

 

 

羊が散歩をしている間に、朝一番に絞った乳で、チーズとヨーグルト作りが始まります。

羊舎に隣接するチーズ工場。

残念ながら私は何度説明されてもチーズ作りの工程が覚えられず、したがってレポートもありません…。

一週間位かけて、チーズとヨーグルトが完成します。出来立てのチーズの美味しさったら!香り高くて、味ももったりと濃くて。チーズ好きにはたまりません。

 

 

さて、羊を飼うということは、当然淘汰しなければ行けないこともあります。

老羊を殺すのも、生まれた子羊の中で、乳羊として条件を満たすまで生育しないだろうと判断された個体を殺すのも、ファームの仕事です。

こんな可愛い子羊も、2ヶ月に一度、選定が行われ、殺します。

殺すときは専用のガンで眉間を撃ちぬきます。

殺した子羊はありがたくミンチにしていただきます。

ミートソースにしたり、ハンバーグにしたり、パイに入れたりして、村のお祭りで売ったり自分たちで食べたりします。

 

ここのファームは、基本的にベジタリアンなのですが、

こうして生活の中で自然に余ったお肉はありがたくいただきます。

こうした生活を行なっていると、肉という食べものは、少し前の時代には、

「たまたま手に入ったときに、ありがたくいただく」ものだったんだな、というのがよく分かります。

スーパーに常に途切れることなく肉が並んでいるというのは、それだけ、人間の生活の営みのサイクルとは外れたところでの殺生が行われているということなんだよね。

手に入るものを、その範囲でできるかぎり美味しく工夫して、食べる。

生きるには、それでじゅうぶん。

 


紹介 author-img 著者

小野美由紀(MiUKi_None)作家。1985年東京生まれ。

コメント (1)

  • 返信

    2012年12月15日

    “ここのファームは、基本的にベジタリアンなのですが、こうして生活の中で自然に余ったお肉はありがたくいただきます。” その6.羊をめぐる生活、そして、肉を食べるということ | None. http://t.co/7iQWlT9s

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