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映画レビュー:「カリーナの林檎」ーチェルノブイリとフクシマ、波に流されえぬもの

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昨日、六本木シネマートで今関あきよし監督(@kalinapapa)の映画「カリーナの林檎」を見てきた。

チェルノブイリの原発事故を題材に、実際の女の子をモデルにして9年の年月をかけて制作された、物語映画だ。


 

あらすじ

 

チェルノブイリ原発事故のあったウクライナの隣国のベラルーシに住む少女・カリーナ。

 

事故のせいでカリーナの母は病気になり、家族は住んでいた土地から逃げ、ばらばらに。

 

 

 

ある日、カリーナは母から聞く。「チェルノブイリには悪魔のお城があって、毒をばらまいている。そのせいでみんな病気になっているのよ。」

 

冬になり、高濃度汚染地域に住む祖母は病気に。母は危篤に。

 

 

そして、カリーナも甲状腺ガンに倒れる。

 

カリーナは決意する。「神様が悪魔を止めてくれないのなら、わたしが代わりに悪魔に頼みにゆこう」と。

 

そうしてカリーナは病院を抜け出す。チェルノブイリの原発を目指して…。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

震災の話題がtwitterのタイムラインにほとんど流れなくなって、どれくらい経つだろう。

原発の話題も、今では一部のコンシャスな人たちが警鐘を鳴らし続けてるだけで、多くの人々は、新しいスタートアップだったり、TPPだったり就活だったり(もちろん、どの話題も関心がある人にとっては等しく大事で、そのことを批難するつもりは全然ない)と、新しい話題に夢中だ。

 

ソーシャルメディアは大量のトレンドが前のトレンドを押し流してゆく形で、どんな話題も量的に同じひとまとまりの波として、次の波が来れば強制的に押し流されてしまう。

その波の間隔が、過去の歴史の中で最短なのが、今だと思う。

 

忘れることが悪いことではない。

忘却にも価値はある。

記憶から消すことで、前に進めることはたくさんある。

 

けれど、ソーシャルメディアのおびただしい情報の中で、震災が、フクシマがチェルノブイリが、すべて等しく、いち情報のトレンドとして遙か後方に押し流されてしまうのは、賢さだとは思えない。

 

◇◆◇

内田樹は新刊「呪いの時代」の中で、

原子力は20世紀に登場したいわゆる「荒ぶる神」であり、日本はその祀り方を間違えた、と述べる。

 

テクノロジーによって厳重に祀られ、畏怖され、管理されるべき存在を、政治とマーケットによって支配することでその価値を貶め、見くびり、危機管理を怠ったからこその事故だった、と。

 

神を怒らせたことをわたしたちは忘れてはならない。

繰り返してもいけない。

 

だから、チェルノブイリの事故を、映画という形で、人の心に残そうとした今関さんの功績は偉大だ。

 

◇◆◇

「チェルノブイリ・ハート」などの原発ドキュメンタリーに比べると、「カリーナの林檎」は、一見おとぎ話かと見まごうような温かみのある可愛らしいタッチで描かれた物語なので、直接的に原発事故のもたらす被害を描いているわけではない。

でも、原発事故後のベラルーシでの暮らしが、放射能に汚染された村での暮らしが、直接そこにいるようなリアルさで、丹念に描かれている。

放射能汚染地域のりんごを美味しそうにほおばるカリーナ。見ているほうは「ああ…!」と思う。

 

でも、これは暮らしなのだ。

 

放射能で汚染されていようと、そこに育ち、そこにあるものを食べる。毎日の神への祈りと同じくらい、当たり前のこと。

 

そのことが胸をえぐる。

 

今のわたしが東京で行っていること、福島の人びとが行っていることと、同じだからだ。

 

原発の影響で、母親が病に倒れる。そして、祖母も。幼いカリーナも。

そこにいるカリーナは、カリーナの母は、カリーナの祖母は、等身大の「わたし」だし、「わたしたちのこども」だし、「わたしたちの家族」だ。

登場するひとびとの肌の温度が感じられそうなほど、ぬくもりを持って描かれた物語だからこそ、わたしはそれを痛感する。

原発事故の恐ろしさが、日々の暮らしと情報と、時間の波に流され、遠のいてしまったいまだからこそ、見られるべき映画だ。

 

六本木シネマートでは12月4日まで、その後全国で上映されるので、ぜひ見に行ってみてください。

 

上映終了後、たまたま今関あきよし監督にお会いできたので、インタビューさせていただいた。

その内容は、次の記事で。

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映画レビュー:「カリーナの林檎」ーチェルノブイリとフクシマ、波に流されえぬもの」への10件のフィードバック

  1. あっ、この記事は【拡散希望】です。前のマイナビの記事tweetしてくれた方、この映画のほうが100倍見る価値ありです。笑
    映画レビュー:「カリーナの林檎」ーチェルノブイリとフクシマ、波に流されえぬもの | None. http://t.co/UBPt4tjR

  2. このレビューもとっても良いです。。 RT @kalinapapa ある種、死にものぐるいの今関より…ありがとうの感謝です!映画レビュー:「カリーナの林檎」ーチェルノブイリとフクシマ、波に流されえぬもの | None. http://t.co/Bc4v1W5R

  3. 映画レビュー:「カリーナの林檎」ーチェルノブイリとフクシマ、波に流されえぬもの | None. http://t.co/eBxa2gG4

  4. 映画レビュー:「カリーナの林檎」ーチェルノブイリとフクシマ、波に流されえぬもの http://t.co/aveaQ7sL

  5. 映画レビュー:「カリーナの林檎」ーチェルノブイリとフクシマ、波に流されえぬもの | None. http://t.co/GZFBDHFn
    全国で上映?本当ですか?

  6. 【拡散希望】原発事故が遠のいてしまった今だからこそおすすめの映画。六本木シネマートで4日(日)まで、その後全国でも。>映画レビュー:「カリーナの林檎」ーチェルノブイリとフクシマ、波に流されえぬもの | None. http://t.co/UBPt4tjR

  7. これは見に行きたい。RT @MiUKi_None: 原発事故が遠のいてしまった今だからこそおすすめの映画。六本木シネマートで4日(日)まで、その後全国でも。>映画レビュー:「カリーナの林檎」ーチェルノブイリとフクシマ、波に流されえぬもの http://t.co/LnpiE0Ic

  8. 放射能で汚染されていようと、そこに育ち、そこにあるものを食べる。毎日の神への祈りと同じくらい、当たり前のこと。
    そのことが胸をえぐる。
    今のわたしが東京で行っていること、福島の人びとが行っていることと、同じだからだ。カリーナの林檎〜映画評http://t.co/NErrvZ7H

  9. 映画レビュー:「カリーナの林檎」ーチェルノブイリとフクシマ、波に流されえぬもの | None. http://t.co/NErmYoYx @MiUKi_Noneさんから

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