サハラ砂漠は正義か?ーブラジリアンワックスに行ってきた。


1179934323_218s.jpg      1179934323_76s.jpg      1179934323_27s.jpg

毛の諸問題、ロンドする。

 

肉と並んで女子の二大命題であるのが「毛」の処理問題であることはみなさまにおかれましては概ね同意されることと存じますが、女子界において、毛の「どこまで処理すればOKか問題」は、マグロ問題(どこからがマグロなのか)と並ぶ、他人に聞きたくても聞けない永遠にロンドする問いの二大巨頭であります。

 

かくいう私も、かつてはこの問題に頭を悩ませた一女子でありまして。

大学時代、留学生の友達に

「ミユキ、なぜ日本の女性は下の毛をはほったらかしなのか。」

と真顔で聞かれて面喰らい、

「そういう文化だから・・・」

と言いかけて、

ふと彼の専攻が民俗学である事を思い出し、

これはひょっとしたら彼の日本人観に大きく影響を与えてしまう、たいへんアカデミックな答弁ではないか、

だとすると迂闊なことは言えぬ、でもどうしよう、

よく「日本人は日本文化について何も知らない」と批判される事が多いけど、その通り、日本人の陰毛観なんて知らないし・・・と悶々とし、結局黙り込んだ覚えがあります。
しかし、このごろ下の毛の処理は世界的にはもはやごく当たり前の常識になっているそうで、オシャレの先端N.Y.Cはもちろん、アメリカ南米ラテン系では処理はもはや当たり前、何もしないのは日本人女子がわき毛をほったらかすのと同じくらい罪なんだとか。
そういえば、留学していたモントリオール—あの、1ブロック毎にSEXショップか麻薬の売人が立っていると言われる荒廃した都市モントリオールにて、興味本位でふらりとその手のショップに入った時、陳列していたビデオのパッケージの女の子たちは、皆、そろいもそろって美しい肌色のランドスケープを披露していたような。
だとすると、彼の疑問もごもっとも。

彼の祖国においては、各人のデルタ地帯にはさわやかな風が吹き抜ける砂漠のリゾート的風景を構築することが当たり前として認識されているのなら、日本に来て、日本女性のあまりの“熱帯雨林”ぶりにカルチャーショックを受けるのも納得がいく。

かといって、日本においてその需要はあるのか、というと、そこが問題なわけで。

外国人男子はともかく、日本人男子は女性が自主的に密林を伐採することについてどう思うのか?

もしも初めて、そういうコトに及んだ場合、女子の某所が鳥取砂丘だったとしたら、その時、どんな感想を抱くのか。

ここが問題の肝ですよ。

これがもし男女逆の立場だとして考えると、男子となんだかイイ感じになりまして、いざコトに及んだ時、相手の局部にもしもなんの装飾も無かったとしたら、

私なら

・それは自分の趣味なのか、それとも誰かに強制終了させられた名残りなのか

・もともとは他の誰かの趣味だったが、徐々に自分もはまってしまったのか

この疑問が頭をよぎってとても営みに集中できない。

 

元々野を駆け地を這い、獲物を追っていた狩猟民族の西欧人に比べ、八百万の神を信仰し、自然と共生しながら「育つに任す」方式で暮らしを営んできた農耕民族・ジャパンの男子の繊細なハートが、力技で人工的なデザイン・ランドスケープを作り出す、西欧文明的美意識に、果たして耐えられるのか。
彼女がサハラ砂漠だったら、引くのか引かないのか、いやむしろアマゾンのほうが正義なのか。

 

「人による」というのがもっともな答えであることを分かりつつも聞かずにはおれないこの問題。毎年夏になれば、この問題こそが、テレビのCM帯を埋め尽くすキンチョーと青雲と同じくらい、私の頭を占拠するのです。

 

体育会系ゆえに…。

 

かく言う私はというと、昨年夏、例のおしゃれ女子なら一度は煩悶するであろうサービス、全世界的流行のあのサービス、「ブラジリアンワックス」を施行したことがありまして。
2009年の夏、私はなぜかノリで浅草サンバカーニバルに出場することになり、毎年上位を争う強豪サンバチームの一員として、優勝目指し汗水垂らして練習を重ねることに。
サンバの世界と言うのはそれはもう、あっけらかんとしたイメージとは裏腹に、大変厳しい勝負の世界でして、評価はフィギュアスケートのごとくきっちり項目点数制、その一点の差が勝敗を決めるという大変シビアな世界。そのためチームはバリバリ体育会系で、先輩ダンサーは後輩が一点のミスをも起こさぬようきっちり指導する、大変に上下関係の厳しい世界なのであります。
その厳しい指導の一環に含まれているのが、「陰毛指導」。

 

ある時新人ダンサーだけが集められ、不安げな顔の私たちとは裏腹に、仁王立ちした先輩ダンサーが神妙な顔つきでこう言うのです。
「下の毛がはみ出ていると審査員の減点対象になります」

 

減点ってどれくらい・・・?怖くて聞けませんでしたが、その場できっちりと処理の仕方を体を張って教え込まれ、(線香がいいとか、専用の鋏でねじりながら切るのがいいとか)「あんたら絶対にミスは許されへんよ」と喝を入れられ、優勝目指すチームのマジ度を頭に叩き込まれて帰された。
勝負のためにまさかそこまで、でも確かに、一人の粗相がチーム全体に迷惑をかけ、「今年入賞できなかったのは○○さんのハミ毛のせいだ」と言われるのは一生忘れられないほどの恥辱だろうな。
そう思い、ブラジリアンワックスでは日本でたぶん一番有名であろうと思われる、原宿は神宮前のオシャレエステティックサロン、「Boudoir」の門を叩いたわけです。

 

アンダーなのにアンダーじゃないヘアカット代

 

なにやらエロティックな外観に、ドアを開けるのを躊躇しつつ、中に入ると受付のお姉さんに個室に通され「全部脱いでバスローブ着てね」と言われて放置される。

部屋の内装は、紫のシャンデリア、赤いビロードばりの椅子にアールデコ調の鏡が置いてあったりして、19世紀フランスの秘密クラブ的な雰囲気が醸し出されておりまして、「これから陰毛抜きますよ」的なテンションはゼロ。日本女子を緊張させないための配慮なのでしょうか。
しばらくするとエステティシャンのお姉さまが部屋に入ってくるのですが、これがもう、いかにも外国人男性と付き合ってます的お色気ムンムン美人なわけで、当然この美人も下はアラビアンリゾートばりのさわやか設計なんだろうなと思うとむしろそっちのほうに興奮する。

 

ここでどんなカッティングを注文するか、大変悩ましいのですが、思い切って「Bold」にするか、「Landing strip」(ググってね)にするか……。

でも「Landing strip」だと見られた時に日本人男子相手では「カ、カトちゃん?!」みたいになりかねず、むしろ性欲から笑いに移行、してしまうのではないか。だとしたら困る、避けたい、

しかし「Bold」はあまりにもトンガりすぎ、ドライブ感効き過ぎで、付いてこられない男子多数、だと困るし。そういえばセックスアンドザシティでも、サマンサが15歳年下の彼氏に「おれ、もじゃもじゃがいいよ」と言われてしぶしぶ毛、生やしてたな……。

と、色々煩悶した結果、Vラインを控えめに処理、という、日本人女子らしい大変中途半端で冴えない注文をすることに。

で、ベッドの上で極めて事務的に恥ずかしい恰好をさせられ施術するのですが、ご想像の通り、涙と血が出るほど激痛です。
最初のVライン(ここの処理はもはやありふれてますね)だけでも死にたくなるほど痛く、もうだめやめて、となりますが、ここはブラジリアンワックスのお店、それだけでは終わらず、文字にするのも恥ずかしい秘密の花園、IラインとOラインも当然、サービス範囲内(意味が分からない方はググってね)。
恥ずかしさに死にたくなっている自分とは裏腹に、お姉さんは陰毛専用ハサミ、ワックスシート、ピンセットを巧みに駆使し、手術の様な冷徹さと華麗すぎる手さばきで処理を進めてゆきます。
30分もかからずに施術は終了、「もう二度と来たくない」と思いながら服を着るも、終わった後のエステティシャンのお姉さんの、一戦交えた感のある、てろんとした笑顔を見ると

「この人はこんな大変な作業をやってくれたんだなぁ・・・偉業。」

と、感謝の念があふれます。

支払いは最後。6700円。高い。アンダーヘアの癖に普通のヘアカットよりもアンダーじゃないってどういうことなの。

 

セドナはやはり遠い、心理的に。

 

しかしですね、身を持って気付いてしまったのですが、一度伐採してしまうと、正直、正直ですよ、快適さ具合が、熱帯雨林時に比べ、半端ないのです。

スカートの足の間には観光地的に程よく整えられたアメリカ・セドナの頂上のごとく快風が吹き抜け、暑い夏はとにかく爽快。こら熱帯気候のブラジル人が行わない訳ないわ。つーかむしろ高温多湿の日本においてはかなり有効な衛生法だし威力は倍?!
人生の中でも数少ない、上手く言葉にできないほどのパラダイムシフトを味わいました。
おかげでサンバでも大変思い切りのよい踊り方ができ、そのおかげか分かりませんが、チームは見事歴代初の準優勝。
じゃあ思い切って全部つるつるにすればいいのか、というと、下の毛はフェロモン分泌の大事な要素、とか、皮脂線から汗が出なくなるからかえって臭くなる、とかいろいろなうわさもあり、せっかく伐採しても肝心の男子に引かれたのでは元も子もないわけで、なかなか踏み切れず。しかも、セドナ状態を維持するには2週間に一度サロンに通うだけの財力と気力が必要なわけで。

 

でも逆に金閣寺の苔庭的な繁茂の仕方も自然の豊かな恵みを感じられ、そこは昭和の日本ポルノに出てきそうな、まさにコケティッシュな魅力があるわよね、白黒だと黒く映るのそこだけだし。

 

ということでやはり一度の施術で思い切りよく世界水準に達することはできず、やはり心は思い切りのわるい大和撫子、伐採と植林について、現在もうじうじと悩み続ける日々は続きます。セドナはやはり、遠かった(心理的に)。

 

一番の解決法はお金は出すからサハラにしてくれ、と言ってくれるソッチ系趣味の彼氏を作ることよね。募集してみようかしら。

 

追記:togetterで伐採に関する男子のご意見をまとめました

今のところやはり日本的石庭が人気のようです・・・しかし砂漠支持派の意見も。

37060310_2264873840.jpg
(※セドナで挑んだ晴れ舞台の証拠写真。ノーパンではありません、念のため。)


投稿者:

miyuki.ono1228

小野美由紀(MiUKi_None)作家。1985年東京生まれ。

「サハラ砂漠は正義か?ーブラジリアンワックスに行ってきた。」への1件のフィードバック

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    実に楽しく読ませていただきました。
    表現がすばらしいですね。作家の森巣博さんの文章を読んでいるようでした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です