425787_580973058581974_563345454_n

今、3冊の本の原稿を抱えている。秋に出版される予定の絵本も含めると4冊が同時進行だ。
一冊も本を出したことがなく、キャパシティも知識も経験もないのに、3冊の原稿を同時に書いていて、頭の中は渋谷の駅構内みたいにわっちゃわちゃだ。

 

依頼がたくさん来るのはうれしい。チョーうれしい。当たり前だ。4歳のころから、「本を書く人」になるのが私の夢だったのだ。それが叶うんだったら他に何にも要らないと思って生きてきた。文章を書くのが好きだ。正直結婚とかにあんまり興味がわかない。一生文章だけ書ければ、それだけでいいと思う。いつか老婆になって、しわしわのよれよれで汚い4畳間とかに暮らしてても、文章が書けるんだったらそれでいいじゃん、とリアルに思う。

 

でも、今の自分のざまはどうだ。
ふと、私は3冊全部に対して、「やりまんみたいな感じ」になっているのではないか、と思う。

 

ミシマ社の三島さんは「一冊入魂」と言っていた。
一冊一冊を丁寧に、心を込めて作る。他の事業に浮気はしない。
私はその三島さんの姿勢に惹かれて、学生時代にミシマ社でバイトしていたのだ。
まあ、あまりにも事務作業ができなすぎて、数ヶ月でマイルドにクビになったんだけど……。
でも、自分の中で、「本を作る人」の後ろ姿はいつだって三島さんなのだ。

 

去年、付き合っていた男の子のことを思い出す。ケンカ別れになってしまったが、振り返れば、彼の言っていることはいつもだいたい正しかった。
彼には、私にはない自信があった。就活のときも、自分が本当に受けたい数社しかエントリーしていなかった。
焦って周りが何十社もエントリーしているのに、気にしていない様子だった。
「○○君は、あれもこれも、って、手を出さないんだね」と言ったら、
「そう。全部に対してやりまんみたいな感じになったら、結局どっこも受かんないからね」と彼は答えた。
それはこれまで舞台を作ってきた中で、学んだことだからね、と。私はそれを聞いて、 はっ、 とした。

 

そう、あのときは はっ、 としたのに、あの はっ、 は今までどこ行っていたんだろう。

 

就活のときも、私はリクナビでエントリーした50社くらい全部にやりまんになって、結局どこも受からなかった。
自信がないからやりまんになるのだ。一冊とランデヴーするだけの、気概と自信がないからそうなる。

 

心は時々、頭ん中の欲望に振り回されて、本当に大事にしたいものをわすれる。
現実をわすれて、風船みたいにどっかに行っちゃいそうになる事がある。でもそれを、
「私は現実にうまく対処している」と錯覚してしまう事がある。
そうやって達成した事は、自信にならない。自信になるのは、いつだって、心で現実にぶつかっていった時だ。それが頭の中にはねかえってきて、面白いものが書ける、面白い、ものが作れる、気がする。

 

とりあえずは、「やりまんにならない」勇気を持つ事だな。


紹介 author-img 著者

小野美由紀(MiUKi_None)作家。1985年東京生まれ。

コメントなし

コメントを残す