storymaker

大塚英志「ストーリーメーカー 創作のための物語論」(星海社新書)を読む。

 

あらゆる物語の大筋は今も昔も一つだけであり、その中の定番の31の要素を取捨選択し、並び替えるだけで、誰でも簡単にストーリーが書ける、という、彼なりの物語論だ。

私が今、書いているのはノンフィクションだけど、本の概要であるプロットを書くのに多いに参考になった。

 

創作をひとつの型に閉じ込めてしまうこと、類型化してしまうのは自由な創作の可能性を奪うのではないか、という批判もあるようだが、私は大塚さんの考え方を支持する。

物語を書く事を特別視してしまったり、神聖視することで何も書けなくなっている人には良い薬だと思う。

 

名作と呼ばれる作品をこれまで多く読んできたせいで、「ものを書く」ということは、とても特別で簡単にできることではない、と思っていた。

でも実際は、そうではなかった。

自分の中でものを書くということを神聖化しすぎ、

その結果、自分自身も神聖化していたんだな、と思う。

 

何かの行為を神聖化しすぎると、それはできなくなる。

童貞の男の子が、セックスしたい、恋愛したいと思っているのにそれができないのは、セックスを神聖化しすぎているせいだ。

頭の中では非童貞よりもセックスに近い位置にいるのに、神聖化しすぎているから、決してたどり着けない。

 

何かをできるようになるということは、それを神聖化しなくなるプロセスなのだなと思う。

さみしいことでもあるけれど、

筋肉に力を込めれば動くように、自分の道具として使えるようになること。

皮膚の下のものにすること、肉体化すること、自分ごと化するプロセスなんだと思う。

 

最近、自分がいかに普通の人間であるか、ということを良く考えさせられる。

「どこにもないものを書こう」と思うから、書けなくなる。

それよりも、太古の昔から、人が連綿と書きつづけていることを、現代のうわずみにうまく沿う形で書いてあげよう。普通のことを書こう。

そう思うと、また別のものが浮かび上がってくるように思う。

 

村上春樹の小説の登場人物はみんな普通の人だ。

作者も、普通の人じゃないと書けない物語だと思う。

村上春樹はちゃんとそれを知っている。

知っていて、掴んでいる。

それが彼の強さだと思う。

 

世の中の普通の人が、ごく普通に行ってきた行為、昔から延々と受け継がれてきたことを語り直すことなのだと思えば、

物語を書く事が、さほど難しいことでないように思えてくる。

 

思えるのと、実際に行為に移すことはまた別だが、そう、強い説得力を持って感じさせられるという意味で、秀逸な一冊。

 


紹介 author-img 著者

小野美由紀(MiUKi_None)作家。1985年東京生まれ。

コメント (1)

  • 返信

    2014年1月31日

    綴ってらっしゃる文章や出てくる言葉がとても美しくて、いつも拝見させていただいています。本でたら必ず買います!応援してます( ´ ▽ `

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