よいセックスを求めて、初心者がサーフィンをしに行った話。


 

先週末、生まれて初めてサーフィンをした。

 

わたしはいわゆる「もやし」である。

どれぐらいにもやしかと言うと、

27年間、自分のジャージというものを持った事がないくらいの、もやしっぷりだ。

運動はからっきし。当然、泳ぎもだめ。

小5の遠泳合宿の時、200人の児童のうち、5人しかいない「泳げないチーム」に入れられた時は、ひどくみじめな気持ちになった。

クロールで沖に出る級友たちを横目で見ながら、浅瀬でビート板を掴んで溺れそうになっている自分が情けなかった。

 

そんなこんなですっかり海とは疎遠の生活を送ってきた人間が、なぜサーフィンをしようと思い立ったかというと、先日お会いしたAV監督の代々木忠さん

「みゆきちゃん、サーフィンすると、体幹が鍛えられていいセックスができるようになるよ」

と言われたからだ。

 

運動はしたくないが、いいセックスはしたい。

そんなスケベ心だけで、わたしは友人に誘われてtrippieceの初心者サーフィンツアーに申し込んだ。

 

向かったのは、千葉の太東ビーチ。

今日教えていただくのは、日本プロサーフィン連盟の理事長の牛越さんだ。

 

人生で初めてサーフィンをする人間が、そんなラスボス並みの相手に教えてもらうのは、路上のたこ焼きしか食べた事のない人間が、フレンチのフルコースに呼ばれてメインディッシュの厚切りステーキをいきなり最初に出されるようなものだ。

いったい、大丈夫なんだろうか?

そう思い、心配していたが、サーフショップから出てきたのは、ほがらかなお兄さんだった。

「理事長」という肩書きから、てっきり「海なめんな」オーラを放つ強面のおじさまを想像していたが、違うらしい。

 

準備運動をしてから、海に入る。

牛越さんは、海に入る前に、何度も何度も繰り返し、呼吸の大事さを説いていた。

 

「3回素早く吸って、7回吐く。この呼吸を忘れないで」

 

そっか。システマと同じで、リラックスが大事なんだ。

考えてみれば当然で、海の中でがちがちに筋肉をこわばらせていたら、波への抵抗が増え、サーフボードに乗るまでに疲れてしまうし、素早くボードの上に立つ事すらできない。

重要なのは、非日常の中、どれだけリラックスしていられるか。

 

ちょっとだけ、「もしかしたら、できるかも」と思えた。

 

いよいよ海に入る。沖に背を向け、白い波際が身体にぶつかった瞬間、身体をすばやく持ち上げてサーフボードの上に立つ。

3回、4回。

海に落ちる。

塩が辛い。

目と舌が塩漬けみたいになりそう。

 

5回目で、それはやってきた。

後ろから訪れる波。身体が板ごとせり上がった瞬間、勇気をふりしぼり、板の上にえいや、と立った。

 

瞬間、身体が自由になった。

ふわっと、わたしと海とをつないでいる重力がちぎれて、わたしは空中に放り出された。

いや、もちろん重力は存在するし、その証拠に3秒後、バランスを崩しておもいっきり、海面に叩き付けられたのだが。

波が、海面が、千葉の海岸の大きな手のひらが、

わたしを地球の表面から、すこしだけ、離してくれたような気がしたのだ。

 

自分以外の、大きな自然の力で今、動かされている。

大きなものに包まれて、守られているような、

そんな気持ち。

 

 

今までスポーツをやる時、人の力でやるものだと思っていて、すごくそれが嫌だった。

無理やり身体の力をひねりだして、敵と戦うような、そんな感じ。

相手に打ち勝たないと、怒られる。

 

でも、サーフィンはちがう。

自然に抗いもせず、従いもせず、ただ、一緒になにかをやること。

大きなものに身をゆだねること。

 

波に乗った瞬間、自分の中で「戦い」が消えた。

ふだん、日常の中で、人とコミュニケーションするときにも、つい感じてしまう「戦い」。

それは本当は、なくすことのできるものだったのだ。

 

すごく気持ちがよかった。脳が真ん中からめりめり裂けて割れ、そのままクラッカーのようにはじけて飛び、宇宙まで中身が広がっていってしまうような気がした。

この気持ちよさは一瞬だけど、これを求めて繰り返し繰り返し波に乗る人の気持ちがすごくよく分かった。

セックスがよくなるかはわからないけど、もっと波と戯れたい。肌を重ね合わせたい。

 

しばらく、サーフィンを続けてみようと思った。

 

 

サーフィン

デーモン閣下のような怖い顔で海に向かう自分…。(CC Mr.Makoto Takenaka)


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