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最近、仕事の用ありで、某新聞社によくいく。

 

築地にあるその新聞社は、でっかい。
社食も、でっかい。

 

私はここで、ぼーっとするのがすきだ。

 

大きい会社は、小さな会社とちがって、打ち合わせが終わった後も、ぼーっと意味もなく、居させてもらえる場所があるから、それは大きい会社の魅力だと思う。

 

社食のぎっこんぎっこんいうパイプ椅子に座って、ぼーっと周りを眺める。

 

ここには、思っているよりもいろんな人がいる。

 

引退間近の、髪の薄くなった記者の方が、スーツですすっと静かにそばをすする横で、
ダイゴスターダストみたいな、おしゃれ過ぎて浮いているスタイリストらしき男の人が、
俺はこんなださい場所にいる男じゃないぜ、みたいな顔をしてどかっと座っている。

 

すごくぴりぴりしてそうな眼鏡のお姉さんが、ぴりぴりのまま、ケータイをにらみつけて、唐揚げをもっくもっくと嚥下している。

 

時おり、そんな人たちの間に、青い制服を着た、工事で働く人たちみたいな一団もいる。
そこだけ別地帯、といった感じでめだっている。

ここには、新聞社内の印刷所で働く人たちも、お昼を食べに来るからね、と、ライターの先輩が教えてくれた。

印刷所のおじいさんたちは、いかにもベテランといった感じで、若くて堅そうな新聞記者よりも、ゆったりと社食の空間を占めて、おだやかにごはんを食べている。

 

うどんのゆげの垣間に、いろんな人が森のきのこのように立ったり座ったりしている。

なめこのゲームのように、ひょっこりと、離脱したり、着席したり、笑ったり、怒ったり、入れ替わり、立ち代わる。

 

会社って幕の内弁当みたい。
いろんな具がある。

 

ニートだった時、新聞社には新聞記者しかいないと思ってた。
そもそも築地市場駅には築地市場しかないと思っていた。

新聞社はときおりネットで叩かれているけれど、それでも、これだけ多くの、多すぎるくらいの種類の人たちが、総体でなにかをしている、というのは、やはり、なんだかすごいことのように思う。

社会の中の面積を占めている。でっかい幕の内弁当。

 

ブログを書きはじめてから、三年経った。
昨年の年末には無職だったが、ある方が私を引き立ててくださって、雑誌の仕事をさせていただけるようになった。
ブログを見てくれた方から仕事の依頼が来るようになって、今は、だいたいブログ経由のお仕事で、ごはんを食べてる。

相変わらず、風呂なし10疂だけど。

 

採用活動のときに、箸でつまみ上げられなくて、幕の内弁当に入れてもらえなかった具でも、働く場所は、あるのだなぁ。

 

就職活動のとき、わたしは働く場所に入れてもらいたくて仕方なくて、
でも、最終的には入れなかった。
でっかい通信社の最終面接で、家族構成のアンケートみたいなの取られて、
「お父さんいないの?」と面接官のおじさんにつっこまれたとき、
口がからからに干からびて話せなくなった。
ビルの入り口のモスキートよけの音波みたいなので頭がきんきんして、私よけなんじゃないか、と思った。
多分、新聞社に入れる人はこういう時「お父さんいないんですよー!」と明るく言える人。
私は幕の内弁当に載れない人。

 

今は、こうして、先輩たちとか、編集者さんとか、ブログ経由でお仕事くれる人たちのおかげで、
なんとか社会に「適合」させてもらってる。

1年前には考えられなかったこと。

 

この前、雨がすごかったので、東銀座から東京駅まで、ちょっとタクシー乗っただけで、すごいリッチなことしてる気分になった。

丸の内のまわりのイルミネーションはパワフルで、ぎらぎらしてて、きれい以外のなにものでもない。
通り過ぎるだけで、自分がシンデレラみたいな気になる、と丸の内で働く人に言ってみたら、その人は笑っていた。

 

前に、JPモルガンで働いてる友達が、丸ビルから自分の茅場町の家に移動する時、タクシー拾ってて驚いた。
それくらいの距離、歩けよって思ったけど、いつのまにか同じことしてる自分がいる。

 

就活ができなくてやめた時、大きなお弁当にうまく載れなかった自分に、絶望していた。
今は、どこかに私のことをそっと箸でつまんで、具として扱ってくれる人がいると思うと、安心する。

 

今、はたらけなくて、こまってる人。

 

幕の内弁当には最初から載れなくても、社会のどこかに、自分が具になれる場所はある。
そう思うと、ほっとするのではないか。

 

幕の内弁当ほどは、きれいには見えないかもしれないけれど。

 


紹介 author-img 著者

小野美由紀(MiUKi_None)作家。1985年東京生まれ。

コメント (1)

  • 返信

    2013年10月15日

    ああ。僕にもその大企業や、たくさん人が昼間働いている場所への憧れがいまだにある。いや、もともとはたくさんの人が学んでいる場所に居たかった、っていう想いなのかもしれないけれど。永遠の憧れ。

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