2013-09-02 23.47.03

連日連夜のコンビニや飲食店での悪ふざけ暴露&炎上、終わる所を知らないですねぇ。

日本という国は女性の顔面から原発問題、社内の人間関係にいたるまで、表面上だけは徹底してクリーンでキレイに見せることに異常な心血を注いでいる国でして、その反動なのかこういう舞台裏が一度露呈してしまうと、みなさんとても耐性がなくて、なんてゆーか、サービスの受け手としてのプライドを崩された時の日本人の怒りってすさまじいよね。

そもそもコンビニもファーストフードも大した賃金で労働させてるわけじゃないし、大した対価払ってないんだから、そこでの従業員にまともな振る舞いを期待できること自体が不思議だなーと思うのだけど(たぶんあれ見て、80年代とかに大学生だったおっさん達で「やっべ俺もああいうことしてたわ」って人超いると思う)、

彼らがあそこまで吊るし上げられるのは、彼らによって飲食の裏側が暴かれたことで「私たちはこれまで、当然クリーンでまっとうなサービスを受けてきましたよ」という、日本が総力をあげて保ってきたメンツをことごとくつぶされた感があって、その共同幻想をぶち壊したことに対する制裁みたいな気がするな。

 

で、ですね。

私がここで取り上げたいのは、それについての是非じゃなくて。

 

私がこのニュースを最初に見た時に思ったのは、

「冷蔵庫の中に入るのって、そんなばっちいことなのかー」という感想と、次の瞬間の

「うわっ…私の衛生観、低すぎ…?」だった。

もちろん自分がコンビニの店長だったら超怒るし自分はぜったいやんないけど、アイスとかハンバーガーとかってビニールで包装してあるわけだし、直接肌が触れてたらそりゃ嫌だけど、そんな冷蔵庫まるごと取り替えたり店潰したりするほどじゃないじゃん。と思ってしまう。

けどそれってやっぱり社会的には衛生観、低いんだよ、ねぇ……。

彼らはそれが不衛生だと思ってなかったからこそやったわけで、その見る側との衛生観のズレが、多くの人の嫌悪感を起こさせたんだと思うんだけど、

こういう問題にしろ、放射能にしろ、

日常の中の潔と不潔の境目、ようするに「どこまで許せるか」っつうのは人によってほんとにバラバラで、その許せる/許せないラインがふとした瞬間に丸見えになったりするのって面白いよね。

 

共同生活なんかしてると特にそうで、たとえば私が前に住んでた6人ぐらしのシェアハウスでは、洗面所に各自の歯磨きとか洗面用具が置いてあるわけなんだけれども、歯を磨いた時の口をゆすぐようのコップはなぜだか誰が置いたのかわかんない一個がポツンとあるだけだった。てことはそのコップの持ち主以外はみんな手ゆすぎ派か、そうじゃなかったらそれを数人で使い回してるに違いなくて、私(手ゆすぎ派)的には(使いまわすのってどうなんだろう…)感はあったものの他人のことだしわざわざ確かめるのもなんだし…と思い、他の皆も真相を知るのが怖いのかなんなのか、数年住んでて誰もそのことに言及しなかった。

 

で、ある日、住民総出で家を掃除してた時、私は衝撃的なシーンを見てしまった。

 

なんと、住人の中でもキレイ好きで知られるRちゃんが、あの、洗面台の栓の部分、髪の毛とかごっつ詰まるとこね、あれを、ひっこぬいて、あの、誰のか分からないコップに、洗浄液を注いで浸しているのを…!!

私が「えっ」て顔して固まったのを見たRちゃん、平然と「えー、やっぱダメー?あとでゆすぐからさー。」
そのあまりの平然ぷりに私は黙るしかなかった。

そのコップ、Rちゃんのだったのか…という気持ちと、もしそうじゃなかったらどうなんだろうという気持ち、そしてRちゃんが良いって言ってるのならまあいいのかな…という気持ちが胸でマーブル模様を描き、結局何を言っていいのか分からずその場を離れてしまったのだけど、その後、ふとした拍子にその事を別の同居人のJくんに話したら、Jくんその場で思いっきり「おえええ」ってリアルえづいてて、そりゃそうだよね、ってことはJくんあのコップ使ってたんか、それはいいけど、他人と共同で使うものは当然他人の不潔/潔ラインに当然委ねられるわけで、自分が知らないところで何が起こってるかは分からないものだよな…この場合、洗面所を綺麗にしたい一心でやってくれたRちゃんに罪はあるんだろうか…という、色んな気持ちで、また胸の中はまだら模様になったのだった。

 

えてしてこんなふうに、何が不潔で何が潔なのかという基準は人によってさまざまで、生活の事ある場面で潔/不潔の合意を他人と取っていくのってけっこう勇気がいることだなあと思うんだけど、

そのうち最も他人と確認取りにくいのはやっぱり「性」の領域だ。

たとえば私はお風呂に入った時、全身洗うのにボディソープをついぞ使ったことがない。(タオル派)というのもこれは齢90になるのに未だ真珠のようにお肌ピカピカなうちのおばあちゃんの「皮膚は擦らなければ擦らないほど若さを保てる」という絶対的な教えを子どもの頃から深く刷り込まれているからなんやけど、

その話を超美容マニアかつオーガニック&ナチュラル生活のコンサルタントである美の巨匠、Bちゃんにしたところ、あからさまに引かれたので、あわてて

「でもさすがにまんこ等はちゃんと石鹸で洗ってるよ!!!」と弁明したところ、Bちゃん

「えっ、まんこは石鹸で洗っちゃだめなんだよ!!!!」と一喝。

今度は私が死ぬほどびっくり。

なんでもボディソープなどの石鹸類には膣などのデリケートな粘膜を守ってくれる大事な細菌までをも殺してしまう成分が入っており、そういうのでまんこ洗うのは厳禁らしい。

「じゃあ何で洗うの?」と聞くと

「水。」 

そっ、そう…。彼女がいくらオーガニック生活の師匠とは言え、さすがにこれは真似できなかった。

 

さらに、同性同士以上にそのへんの価値観がすれ違って困るのはやっぱり男女。

例えばセックス前にシャワー浴びる浴びない問題だけど、私はイキオイ重視なので相手が嫌がらない限り浴びなくて全然OK派なんだけど、ある時付き合った相手が「シャワー浴びないと絶対セックスしたくない派」で、それは「私が」ではなく「彼が」で、「美由紀ちゃんいいから、僕入ってくる」と毎回毎回、彼が風呂に入らないうちは絶対セックスさせてくれず、体臭好きの私にはそれがつらく、おまけにキスも、(彼が)歯磨きしたあとじゃないとさせてくれなかった。それでいて彼は私の歯クソとか目やにを舐めとるのが大好きという奇特な趣味の持ち主で、その不可解なギャップもあってか結局その人とは長続きしなかった。

こういうの、今どき男子って言うの、どうなの、わからないけど、あと別の相手で、自分の排便時の付着が気になってしょうがないから一週間に一回Oライン周りの毛を必ず剃ってる、という人もいたな。それ聞いた時のマジング感はすごかったけど、相手のデリケートな心情を思うと「気にすんなよ」って言えなかった。

衛生観の不一致って、男女の付き合いに多大な影響をおよぼすよね。私はもうちょっと寛大な人がいいな…と思ってたら、現代ビジネスでこんな記事を読んでしまい…。

“女性の子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスは洗っていない不潔なペニスから感染します”

ひ、ひえー。超怖い!!!!!
好きな人のチンカスくらい、まぁいいじゃん、って思ってたけど、チンカスで癌になったらさすがに浮かばれない。今度から気をつけよう。

自分は気にしなくても健康的には超NGってこともあるもんだね。

そういえば女子の恋愛本とかHOW TO本とか読んでると必ず「フェラチオしたあとにキスしてくれない男はやめとけ」的なことが書いてあるんだけど、じゃあアナル舐めはどうなん?とか色々考え…………
ごめんなさい、もうやめます。

 

とにかく。

 

何が言いたかったかというと、こんなふうに自分にとってはごく当たり前の潔/不潔ラインに基づいて「セーフ」だと判断してる行為も、他の人からしたらガンガン不潔エリアに入ってるかもしれないわけで、それを考えると、コンビニの店員さんの悪ふざけとか、不衛生な行為も、なんか、とやかく言えんなー……という気になってしまい、ばかだなーとは思うけど、やっぱり叩く気にはなれないのだった。

同じ共同体に属する他人は自分とだいたい同じくらいの価値基準で生きてくれてるっていう共同幻想は、できれば壊されたくないものだけれど、でもやっぱり、他人はみんな、隣にいる人だって、全然違う世界で生きてるんだよね。

 

ちなみに私は冷蔵庫に入られるより、路上や駅で酔ってゲロ吐いてるおっさんのほうがよっぽど嫌。金銭が介在してなかったら何やってもイイと思ってしまうほうがよっぽど問題だし不潔だわ。

 

ちなみにこれまでの人生の中で潔/不潔パラダイムが大転換した出来事があったのは、世界一周中のパキスタン。路上の安食堂で、オープンキッチンになってて客はみんなキッチンの前に並んで出来上がるのを待つ方式のとこで、ちょうど料理人のおっちゃんが鉄鍋で野菜を炒めてたのね。そしたら突然厨房の影からネズミがダーーーー!!!って走ってきて、コンロの角でこけて、こともあろうにその鉄鍋にドーン!て落っこちた瞬間、その場にいた全員が「あっ」って空気になったんだけど次の瞬間そのおっちゃんが目にも留まらぬ速さで野菜ごとそのネズミを食材用のゴミ箱にボーン!て放り込んで、そのへんのトイレットペーパーかなんかでちょいちょいってフライパン拭きとって、何事もなかったかのようにまた平然と油引き始めた時。

そんでその事に「あっ」てなってたのが私以外に誰もいなかった時。

 

私はもう、この世のすべての、自分以外の誰かが作った食べ物に関しての、一切の不潔は諦めよう、と悟った。

 

他人にあんまり期待しないほうが、ラクに生きられるよ。

 

 

 

 


紹介 author-img 著者

小野美由紀(MiUKi_None)作家。1985年東京生まれ。

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