男という“弱さ”ー奥谷まゆみ・長谷川淨潤「男本」


先週、以前からお会いしたかった整体師・奥谷まゆみさんの整体を受けに行った。

 

私は彼女の本が大好きだ。

女性の身体のことを知るのに、これ以上のよいガイドブックはないと思うほど、親切に丁寧に、分かりやすく、そして誰もが読みやすいテンションで書かれているし、その根本にある思想−「悪い身体なんて無い。どんな身体もかならず活かす道がある」という考え方にも、いたく救われる。

整体というと科学的な観点を重視する人にとっては、非論理的に聞こえるものなのかもしれないけれど、日常の中で感じる身体感覚がどこから来るのか、人がつい取ってしまう行動の「なぜ?」を知るために読むと、否応なしに身体レベルで納得させられるので、面白い。

 

さて、今回は同じく奥谷さんが書かれた「男性の身体」についての本をおすすめしたい。

奥谷さんの整体室でしか買えない(Amazonでは中古のみ)、その名も「男本」

男性の整体師である長谷川淨潤さんと二人で、男性という性が持つ特質を、整体的、生物的な観点から詳しく紐解いている。

 

私は母子家庭で、家の中に男性が居た事がないので、男の日常的な身体(それこそ家族レベルに慣れきった身体)が、よく分からない。

そのためなのか、男性と話す時は今でも少し、緊張する。

特に、複数の男性と会話する時はなおさらで、声の大きい、リア充っぽい男の人が同席している飲み会なんかでは、特に萎縮してしまう。

学生の時、対人恐怖症と容姿へのコンプレックスを解消したくて、六本木や銀座のクラブで働いていたが、そういうお客さんばかり来るので、とても怖くていつも喉がガチガチに固まっていた。

(我ながら、よく働けたなと思う。さぞかしママは雇ったことを後で後悔していたに違いない。)

けれど、この本を読んで、この歳までひきずってきた男性への恐怖が少し、氷解した。

 

ああ、男って、実はこんなにも弱い生き物だったんだなぁ、と。

 

男のからだが、あんなにも固くできているのも、

頭の中にしかない数字や肩書き、目に見えない値札ばかりをいつも気にするのも、

すぐ風邪をひくのも、

筋肉をつけようとするのも、

自分にしかわからない、女から見れば「なぜ、それを?」と思うような方法で、コンプレックスを解消しようとするのも。

 

彼らが生物として、女よりもずっと、脆くて繊細だからだったんだ。

 

もしも女と同じ、柔和な身体しか持っていなかったとしたら、すぐにやわらかな内面とともにぺしゃんこになってしまうであろう、彼らという性。

真直ぐにしか進めず、行き当たるとぽきんと折れてしまう、彼らの身体が、性質が、とてもかわいく、いじらしく思えてきた。

 

ここ数年の恋愛で、私は男に怒ってばかりいた。

なんでこの人達は、女だったら考えも付かないような方法で、目の前の問題から逃げてしまうんだろう。

女だったらその腰の強さでさっさとぶつかって、ばきばきと折れ、そしてさっさと乗り越え、ふてぶてしくちゃらにしてしまうような痛い現実と、いつまでも向き合わず、そのくせずっと引きずったままにしておくんだろう。

そう感じて、怒っていた。

 

でもそれは、必要のないことだったのだ。

いつでもこの人たちは、怖いんだ。

社会的な外圧とか、いろいろなものと戦っていて、自分の中のやわらかいものを守らなきゃいけないから、怖いんだ。

 

知人に柴田さんという男性がいる。

柴田さんはなんかすごい人で、頭がよくビジネス的には成功していて、なんか知らんが各国の大使とか、アラブの金持ちとか、変な人脈をいっぱい持っていて、怖いものなど、まるでない人のように見える。

けれども彼は、なぜだかいつも緊張している。とりわけ女性と話す時は、ティーカップを持つ手が震えるくらい緊張している。

彼はそんな自分の弱さをよくわかっていて、いつでも自己卑下しているが、その卑下にもまた、弱さを隠すためのずるさが含まれている。

 

この本を読んで、私はそんな彼を愛しいと思う。

 

Ust番組「メンヘラ的家族論」でも話したけれど(50分30秒らへんから)、男の人たちが、怖さを払拭したり、コンプレックスを解消しようとして、外に向かうからこそ、経済が発展したり、なにかを発見したり、お金が稼げたり、子どもが育ったり、文学が生まれたり、社会が豊かになったり、する。

それはとても、敬意を表すべきことのように思える。

 

松岡正剛の「フラジャイル 弱さからの出発 (ちくま学芸文庫)」に描かれているような、脆さや弱さ。弱いからこそ、転じて強さを発揮できるものもの。

自分自身の性の片割れが、特大のフラジャイルだったという事に気づいて、いま、やっとその事に感謝したい気持ちだ。

 

男の人って、弱かったんだな。

その事が私を、あたたかい気持ちにさせる。

男の人が弱いいきものでよかった。

もっと彼らのことを愛してあげよう。

 

女性向けの本ではありますが、男性の身体に生じる不快な症状(ケガ、病気など)がなぜ起こるのか?について詳しく書かれているし、女から見ると不可解な男性の行動についても解説されているので、男女両方におすすめです。

 

参照記事:親を殴るということーUst番組「メンヘラ的家族論」

出張お悩み相談室「みゆきの穴」をはじめます

弱者の流儀:Ust番組「ナンパの手帖vol4『カウンセラーという病』」ダイジェスト


投稿者:

miyuki.ono1228

小野美由紀(MiUKi_None)作家。1985年東京生まれ。

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